iPadを運転教習に使う
指導員や教習所へ通ったことのある方ならおわかりですが、車を運転するのに大事な要素の一つに「車両感覚の習得」というものがあります。
「車両感覚」とは、自分の運転しているクルマの大きさつまり先端や後端、横幅、それとタイヤの位置を運転席にいながら把握できる感覚です。この感覚を身につけないと、ぶつかるかぶつからないかを判断したり歩行者などとの安全な間隔をとったりすることができません。
とても大事な教習課題です。
この車両感覚を身につけるのが、「S字コース」「クランクコース」「方向変換」など「狭路コース」と言われる場所での教習です。
最初のうちは当然うまく通れません。縁石に乗り上げたり、ポールに接触したりしてしまいます。
でも練習を重ねるうちに、クルマの端やタイヤの位置が何となくわかるようになり、上手に通ることができるようになります。
教習生が失敗したとき指導員は車を停止させ、状況を確認させた上で、何がいけなかったのか、どうすればよかったのかを考えさせます。その際必要に応じてドアを開けて縁石を見せたり、場合によっては車から降りて車両位置を確認させるといった指導をおこないます。
その練習を効果的に支援するのがiPadです
コースの上方7メートルの位置に設置したカメラの映像をリアルタイムでiPadに映し出します。
車から降りなくても、その映像によって教習生は自分の車の位置が手に取るようにわかりますから、このまま進んでいいのか、切り返さなくてはいけないのかといったことが今まで以上によくわかります。
つまりiPad上のリアルタイム俯瞰(ふかん)映像と、運転席から見える範囲の両方の情報から「車両感覚」を早く効果的に身につけることができるのです。
全く新しい試みなので私たちもどのくらい効果があるのかの検証データを取り始めたばかりですが、実際に体験した教習生の方からは、圧倒的多数で「縁石やポールとの位置関係がわかりやすい」という評価をもらっています。
※指導はあくまで停止状態で位置確認のためにおこないます。車両を動かしながら軌道を修正指導するといった使用方法は当然教習の目的にふさわしくありません。また録画映像によって指導するといった方法も、とられる時間と効果のバランスを考えると現実的ではありません。
※教習でのiPad使用にあたっては各都道府県の公安委員会への事前審査・届け出が必要です
中には「もってる指導員がかっこいい」とか「iPadをはじめてみられてよかった」といった思いがけないうれしい反響もいただいていますが、きっと皆さんの教習に役に立つものと信じています。
実際の教習の様子を日本テレビ「ニュースエブリ」が取材、報道されました。以下のリンクからご覧いただけます。
http://www.ntv.co.jp/every/feature2/20100913.html
運転教本もiPadで
iPadは「電子書籍デバイス」としての利用価値が大きな話題にもなっています。画面が大きく見やすい上に拡大縮小ができるので見たいところをより詳細に見られます。
これを運転教本に利用しない手はありません。出版元の許可をもらって、教科書をデジタル化しました。
予めインデックスを設定しておけば、紙の教科書をめくって目的のページにたどり着くよりスピーディにページにアクセスできます。 これも教習生からは「見やすい」「必要な箇所を拡大してみられてよい」といったコメントをもらっています。指導員も「慣れれば使い勝手は非常によい。」といった好評価を下しています。
ほかにも写真を入れたり動画も入れることができますから、応用範囲は非常に広いでしょう。